妹の恋人[完]
「サトミ・・・」

『なに?』

「好きだよ」

『・・・私も』

こんな俺でも、元気にしてくれようと頑張っている彼女に気持ちを伝えたくて。

好きって言葉で伝わるんだろうか。

どうしたら伝わるのかなんてわからない。でも、言いたいんだ。

「好きだ」

好きな人に気持ちを伝えるって、こんなに幸せなことなんだ。

それから、宿題のことや明日の授業のことを話して、おやすみと電話を切った。

ベッドに寝転び、天井を見上げる。

ほんの数時間前に見ていた天井と、同じ天井のはずなのに全く違って見える。

「夢か・・・」

勉強だって、バスケだって、頑張ってきたのはそう、カナコの自慢のおにいちゃんになるため。

そんな動機だったんだ。

でも、今は自分に負けているから。だから、カナコは俺を避けているんだ。

同じ屋根の下にいても、顔を合わせても、以前のように笑顔で話をしてくれなくなったカナコ。

失ったものを取り戻すにはどうしたらいいのだろう?

「コウヘイ~、お風呂よ~」

階段の下から母さんの呼ぶ声がする。

ゆっくり温まって、明日からも頑張ろう。
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