妹の恋人[完]
俺より家を出る時間が早いカナコに先にシャワーを譲り、俺は新聞を片手にリビングへ行くと母さんが朝食の準備をしていた。

「おかえり。カナコも一緒?」

「うん、急に走るとか言い出すからびっくりしたよ」

新聞を広げて記事に目を通しながら、母さんとそんな会話をしていると、スーツに着替え終わった父さんがコーヒーを飲みにやってきた。

「あれ、珍しいね」

いつもは俺が走っている間に出て行くか、もしくは俺より遅く出て行く父さん。

朝、顔を合わせることはあまりなかったけど、今日はゆっくりしているようで。

「ああ、今日はすこしゆっくりなんだよ」

母さんが入れたコーヒーを飲みながら、俺の読んでいた新聞を横から覗き込んでくるので、そのまま父さんに渡す。

「悪いな」

コーヒー片手に新聞を読んでいる父さんの姿なんて、いつ以来だろう?

「朝父さんがゆっくりしているのって、久しぶりだね」

なんだかそんな姿がうれしくて。

シャワーが終わって着替えてきたカナコも、うれしそうに父さんにじゃれついていた。

「コウヘイも早くシャワー浴びていらっしゃい。朝ごはんにしましょう」
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