妹の恋人[完]
「お父さんや、お母さんと離れるのも辛いけど、ここを離れるのも嫌なの」

泣きじゃくりながらも、しっかりとした口調でそういうカナコ。

床に座ったまま、両手で顔を覆い止まらない涙を必死にぬぐっている。

「わからないよ。おにいちゃんと一緒に居たいの」

すぐ前に座っているカナコに両手を伸ばし、ぐっとその頭を抱きかかえた。

「カナコ。きっと今はびっくりして冷静に考えることができないと思うけど、父さんも母さんもカナコのことを思って、連れていきたいんだと思うよ」

無理に行かせることも、引き留めることも俺にはできなくて。

嫌がるのを無理やり連れて行っても、きっと皆がつらくなるだろう。

かといって、もし引き留めたとしても・・・???

会社が始まったら、何時に帰宅できるかもわからない生活が始まるかもしれないのに。

高校1年生になったばかりのカナコを、ひとり家に置いておくのもどうだろうか。

「おにいちゃん~」

俺の背中に両手を回し、ぎゅっと抱きついてきたカナコは、しゃくりあげながらも必死にあれこれ考えているようで。

俺は、カナコの言葉を待ちながら、やさしく頭を撫で続けた。
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