Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「治れば今よりも速いスピードで仕事をこなせるだろうし、これ以上、華穂ちゃんに負担をかけなくて済む。今まで本当にごめん、社員でもないのに手伝わせてしまって」

「いえ、そんな……」

憑き物が落ちたみたいに清々しく笑う御堂さん、反対に私の心は暗くなった。

それってつまり、右手が治ったら、もう私は必要なくなるってことだよね?

”お手伝い”という口実で頻繁に会うことができていたけれど、それがなくなれば今のように彼のそばにはいられないだろう。
それどころか、私と彼を繋ぐものはなくなってしまう。

――それでも御堂さんは、私に会いたいと言ってくれるかな……?

今朝の淡白な態度を見ていると、とても私のことを好きでいてくれているとは思えない。

ひょっとして、御堂さんにとってあのキスは一時の気の迷いだったんじゃ……。
ムードに流されて、ついしてしまっただけとか……?

どんどん不安が押し寄せてきて疑心暗鬼に陥ってしまう。

そもそも彼は、社長であり大企業の息子。なんの取り柄も持たない私なんかを好きになるとは思えない。
千里さんだっているわけだし……

本気で自信を失くしてしまって、横目でこっそりと彼を覗き見るが、こちらをちらりともせず仕事に熱中していた。
どうやら動揺しているのは私だけみたいだ。

なんの他意もないくせに女の子に優しくする癖のある御堂さんは、その子がもし本気になってしまったらなんて、考えたことはあるのだろうか。
彼の笑顔も優しさも、恰好いいルックスも甘い言葉も、今はとても残酷に思えた。
どうしてそんな彼に深く踏み込んでしまったのか、浅はかだった自分を後悔した。
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