Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
窓の外に見えていたオレンジ色の夕陽が、濃い闇色に変わる頃。
デスクの上に置いていた私の携帯電話が、わずかに音を立てて震えた。
ディスプレイには身に覚えのない番号が表示されており、誰だろうと首を傾げる。
仕事を続けている御堂さんの邪魔にならないよう、背中を向けて、小声で電話に出た。

「はい。佐藤です」

『華穂? おれおれ』

え? おれおれ詐欺だろうか? それにしても私の名前を知っているだなんて用意周到だ。携帯の番号、どこからバレたのだろう。
対応に悩んでいると。

『わかんねぇ? 陣だよ』

「じっ――」

陣さん!? と叫びそうになって、慌てて自分の口を塞いだ。
もしも御堂さんに聞かれたら、きっと変な風に思われる。どうして連絡を取り合っているんだ? とか、いつの間に番号を交換したのか? とか。
とはいえ、私も陣さんと携帯の番号を交換した覚えはないのだけれど……

慌ててオフィスを飛び出し階段を下り、誰もいない一階ロビーへと向かった。

「陣さん、どうして私の番号を!?」

携帯に左手を添え、声が響かないようにして彼を問い詰める。

『そもそも、あんたの通う会社だって知ってたんだから、今さら電話番号くらいで驚くなよ。まぁ、千里んとこほどデカい会社になると、個人情報くらい簡単に調べがつくってことで』

「でも私、おふたりに『カホ』という名前くらいしか伝えていなかったのに」

『画像とキーワードさえあればすぐ個人が特定できる。あんたの映った監視カメラの映像と、クレジットカード情報なんかを組み合わせれば一発だ。まぁ、もちろん、やってることは合法じゃないけどな。ハッキングに近い』
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