Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
陣さんは恐ろしいことをさも当然のことのように軽く言い放ち『って、そんなこと言ってる場合じゃねんだって』私の個人情報をそんなこと呼ばわりした。

『あんた、今、夕緋の事務所にいるんだろ? ちょっと迎えに来てくんねぇかな』

「陣さん、この辺りにいらしてるんですか?」

『最寄り駅までは来たんだが、そっからどうやって事務所に行くのか忘れちまった』

陣さんは、道を忘れたのは自分自身の過失であるはずなのに、まるで誰かのせいみたいにあっけらかんと言い放つ。こういうところが彼を子どもっぽく見せている原因なのかもしれない。

『それから、また余りもんだけどケーキ持ってきてやったから、夕緋とふたりで仲良く食べな』

わがままな中に、ほんのちょっぴり織り交ぜてくる優しさ。きっと根はいい人なんだろうけれど……

『ただし、迎えにきてくれたらな』

ふふん、と鼻を鳴らしてそんな条件を追加する。
やっぱりちょっと意地悪かもしれない。

こんな性格に難ありの陣さんだけれど、パティシエとしては超一流。
前回会ったときに貰ったケーキの頬が落ちるおいしさを思い出して、仕方がない、駅まで五分の距離を迎えに行くだけであのケーキが食べられるのならば、悪い話じゃないと思った。

「わかりました。御堂さんと一緒にお迎えに――」

『いや。あいつには言うな』

なぜか陣さんはきっぱりと私の提案を拒否した。
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