Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「どうしてです?」

『俺と華穂がこうやって連絡取り合ってること知ったら、あいつ嫌がるんじゃねぇの?』

「あ……」

そうだった。
ましてや、先日、千里さんや陣さんと会って話をしたことを御堂さんには言っていないのだ。
まるで千里さんの行動を告げ口するようで、なんとなく打ち明けられずにいた。

これ以上、誤解を上塗りするような真似は避けた方がいい。

「だったら最初から私じゃなくて御堂さんに連絡を取ればよかったんじゃ」

『道がわかんないなんて子どもみたいなこと、恰好悪くて言えるかよ』

「……そうですか」

私には言えるんだなんて思いながら、きっと男同士特有のプライドの競り合いみたいなものがあるのだろうと解釈する。

『あくまで、迎えの件は内緒にしろ。俺が勝手に押しかけたふりをしてごまかせ。とにかく駅にいるから頼む。着いたらこの番号に電話くれ』

「え、あの、ちょっ……」

会話は強引に打ち切られ、ツーツーツーという虚しい電子音だけが受話口から流れた。

「仕方ないな、もう……」

とにかく、御堂さんにはバレないようにこっそりと駅へ迎えに行き、陣さんをここまで連れてこよう。
私はなに食わぬ顔で自席へと戻り、陣さんはさもひとりで来たかのように事務所を訪問する。

あまり長時間席を外すと訝しく思われるかもしれないが、往復十分弱、それくらいの時間ならなんとかごまかせるかもしれない。

私は事務所を出て、駅に向かって歩き出した。
< 120 / 249 >

この作品をシェア

pagetop