Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
走って逃げる? ううん、相手がもし本気ならとても逃げ切れる距離じゃない。
下手に刺激して襲われても困るし……

どうしよう……御堂さん……

ひとまず携帯の着信履歴の中から御堂さんの名前を探し出して、どうするべきか手を止めた。
内緒で出てきてしまった手前、助けを求めるのは気が引ける。
けれど、そんな悠長なことを言っている場合でもなくて、私が悩んでいる間にもうしろの人物との距離は縮まっていく。

仕方なく、私は通話ボタンを押した。

お願い、出て!

やけに長く感じる呼び出し音を耳にしながらぎゅっと唇を噛みしめる。
しばらくすると、怪訝そうな御堂さんの声が響いてきた。

『もしもし、華穂ちゃ――』

「御堂さん、あの、不審な人がいて……」

うしろの人物に聞こえないよう声を潜めながら早口で捲し立てると、受話口の御堂さんの声に緊張が走った。

『――今、どこにいるの?』

「駅に向かって、少し歩いたところです、追いかけられてるみたいで――」

『すぐに行く――』

ブツッと音声の途切れる音。
私は携帯をぎゅっと握りしめて早足で歩いた。

すぐに行くと言ってくれたとはいえ、ここまで来るのに走っても一、二分はかかるだろう。
私とうしろの人物との距離は、どう見積もっても数秒だ。
その上、足音はどんどん速くなってきていて、振り返るとすぐそこまで迫っていた。
< 122 / 249 >

この作品をシェア

pagetop