ナミダ列車
「……このレールの先にはさ、目的地が必ずあるだろ?」
止まっていた景色が再び動き始めると、ずっと黙っていたハルナさんが唐突に口を開き始めた。
頬杖をついたまま、窓の外を眺めていたそれを正面にいる私へと向け直す。
「だから人は迷わず乗り込むことができる」
「…」
「そこには決まった未来が存在しているし、確かなものだから」
不思議な雰囲気を引き立てる丸眼鏡に、襟元がくたびれたグレーTシャツ、ジーンズに、もっさりした黒髪。
この電車に私が乗車した当初と変わらない風貌なのに、まるで別人のように話す。
「でも、何処に行くのか不確かな電車だったらどうしよう」
「…あの」
「何処に行くのかも分からない。不安だし、怖いから、多くの人は乗り込むことを選択しない」
「…」
「実質的に前に進むことができているのは後者かもしれない。それなのに人はなかなかそっちに踏み切れない。じゃあ、踏み切れる人はどんな人なんだろう」
ガタンゴトン…電車が揺れている。