ナミダ列車








「あなたも、乗ってるんですか?」

「ん?」

「目的地の分からない、電車に」




そして一つ気になったことがあった。

ぼんやりと外を眺めながら乗車しているのかとも思ったけれど、実際問題ハルナさんはどうなのだろう。

どういった理由で、この"東武日光行き"に乗り込んでいるのだろう。





「乗ってるよ」


ハルナさんは、静かな佇まいで口を開いた。






「目的地がより一層分からない電車に」

「…より、一層…」

「何処に辿り着くのか本当に分からない」

「…」

「逃げて、諦めることも可能だったし、むしろその方が楽だったのかもしれないな」







「けれど、」そう付け足したハルナさんは丸眼鏡を外して私の瞳を直視してくる。

寂寥感と漂流感。ハルナさんは言葉で表すのならそんな人だった。







「希望を捨てきれなかった」

「希望、ですか…?」

「うん。俺、さ……」





無機質な車内アナウンスが鼓膜を揺らしてくる。空調の風が私の長い髪をたなびかせ、その後を追うようにしてハルナさんの髪も巻き上げられる。








「人を…"殺した"ことが───あるんだよね」





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