ナミダ列車









「してませんよーて。その様子じゃ?若いのにかなり日光通のようで」

「ふふん。そうですよ?歳なんて関係ありません。なんせ先月のゴールデンウィークにも行ったくらいですから」

「……先月も…、ね」






本当に表情がコロコロ変わる人だ。

頬杖をつくハルナさんは、ふうん、と何処と無く素っ気ない。








「どんなだった?先月行った、日光は」

けれど、一応は聞いてくれるようだ。クイッと口角を上げる彼は、また一つ私に踏み込んできた。






「…んー…、快適でしたよ」

「快適?」

「人もそんなにいなかったし」

「ゴールデンウィークなのに?」

「そうですけど…」

「ふうん、それなのに人少なかっただなんて随分ラッキーだったんだね」






ハルナさんは淡々と口を開いた。




……そういえば、そうだったかも。


先月。5月に日光を訪れた時。

その時はちょうどゴールデンウィークの真っ只中だったというのに、案外空いていたような気がする。

快適な旅だった。あまりにも時間に余裕があったから、バスに乗って奥日光にも行くことができて……。






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