桜色の涙
「もう少しで花火ですね」
「だね!あ、その前にかき氷買ってもいい?」
小谷さんの言葉に反応したのは矢代さんだけ。
花火。その言葉を聞いて何も発することができなかった。
だって、去年は花火が上がった瞬間に見たくもないものが目に飛び込んできたんだから。
って、すぐに去年と比べて考えてしまうのも俺の悪い癖。いつまでも過去に囚われていても前を向けないよね。
「よし、じゃあ行こっか」
矢代さんが買いたいと言うかき氷の屋台は混んでいる。
もうすぐ花火が始まるというのに空を見ている人はいなかった。
「あの、広瀬くん」
突然言いづらそうに縮こまって俺の服の袖を引っ張る小谷さん。
どうしたんだろう、と指差す方を見ると。
「嘘、でしょ……」