桜色の涙

「悠大くんっ!」


やめて。やめてよ、矢代さん。


お願いだから今だけは気づかないで。もしも星那と目が合ったら……。



「……は?広瀬?」


「じ、ん……?」


どうして俺の方を見るの?どうして俺の方に目が向くの?どうしてそんなに切なそうに俺の名前を呼ぶの?


好きじゃないのにどうして……?




────ドン。


その瞬間、夜空に大きな花が咲いた。その光は地上の人々の顔を照らすけど、今だけは見られたくなかった。


本当に俺って情けない。こんなことで心が折れて泣きそうになるなんて。



「行くぞ、星那」


「え?で、でもっ」


ほら、やっぱり。去年と重なって見える。


あのとき星那の隣にいたのは俺なのに、今は江崎くんがいる。それが本当に悔しい。悔しくてたまらない。
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