桜色の涙
「……の、あのっ、広瀬くん?」
「え?」
ほら、またやってしまった。またボーッとしていたらしい。……全然集中できない。
懐かしい星那の香り。少しまくられた制服の裾。変わらない儚げな瞳。いつ見たって可愛すぎだよ。
「あの、広瀬くん」
「ん?」
星那に見とれながらも俺は順調に陶芸を進めていった。すると左隣の小谷さんが呼んでいることに気づいて顔を上げる。
「ここの作り方、わかりますか?」
彼女が指差したのは、さっき担当の人が説明していたコツをつかまないとできないところ。
最初はボーッとしていて話を聞いていなかったけど物作りは俺の得意分野。
勉強も運動もできる方ではないから、美術的センスだけは負けないように頑張ってきたんだ。