桜色の涙

「あぁ、ここはこうしたら……」


慣れた手つきで教えると「すごいですね」と褒められ、彼女はまた笑顔で作品作りに没頭していた。


ひと息ついて星那の方へ視線を移すと。



「「あ……」」


どうやら星那も俺の方を見ていたらしくパチッと目が合った。


え、え、どうしてこっちを見ているの?もしかして俺のことを見ていた……?



「……ごめん」


それだけ言って彼女は視線を手元に戻す。


そんなわけないよね。星那が俺のことを気にしているわけがない。


きっとたまたま俺の方向にある物を見てボーッとしていただけ。だから気にする必要はないよ。
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