桜色の涙
「……広瀬くん」
だいたいの人が食べ終わり、渚も矢代さんも席を立っていた頃。正面にいた小谷さんに話しかけられてまっすぐ前を見る。
「どうしたの?」
小谷さんの目はいつもと違い、何かを決意したような強い目をしていた。
「お風呂からあがった後ロビーで会えませんか?」
────ドクリ。
胸騒ぎがする。このままじゃいけないような、何かを間違えたような、そんな気分。
でもその理由はわからない。
「うん、わかった」
彼女に言われなくても、それがふたりだけで会うのだと悟った。
何を言われるんだろう。それはわからないけど、大事な話だということだけはわかった。