桜色の涙
◇◆◇
「ごめん、お待たせ」
「いえ、待っていないですよ」
夜の8時半。就寝は10時で自由行動は9時までだから、あと30分しか出歩けない。
今、俺の向かいには小谷さんがいる。
「呼び出してごめんなさい」
「大丈夫だよ。それでどうしたの?」
何度考えてもここに呼ばれた理由がわからなかった。
何か気に障ることをしてしまったんだろうか。それとも他の人には言えない何かがあるのかな。
いずれにしても俺はしっかり受け止めなければならない。
「あの……」
次に何を言われるのか気になる。彼女が躊躇うから俺まで緊張する。
「広瀬くんのことが好きです……っ」
息を吸って彼女が言ったのはその言葉だった。