桜色の涙


◇◆◇



「ごめん、お待たせ」


「いえ、待っていないですよ」


夜の8時半。就寝は10時で自由行動は9時までだから、あと30分しか出歩けない。


今、俺の向かいには小谷さんがいる。



「呼び出してごめんなさい」


「大丈夫だよ。それでどうしたの?」


何度考えてもここに呼ばれた理由がわからなかった。


何か気に障ることをしてしまったんだろうか。それとも他の人には言えない何かがあるのかな。


いずれにしても俺はしっかり受け止めなければならない。



「あの……」


次に何を言われるのか気になる。彼女が躊躇うから俺まで緊張する。



「広瀬くんのことが好きです……っ」


息を吸って彼女が言ったのはその言葉だった。
< 237 / 374 >

この作品をシェア

pagetop