桜色の涙
「え?」
驚いて開いた口が塞がらない。今の嘘だよね?小谷さんが俺のことを好きだなんて。
彼女の目はまっすぐに俺を捉えていて、とても嘘をついているようには見えない。
見えないけど、いきなりそんなことを言われても信じられないよ。
ずっと “ 友達 ” だと思っていた。彼女も俺の心の中にはまだ星那がいることを知っているはず。
それなのにどうして……。
「篠原さんのことが好きなのはわかっています。でも、どうしても伝えたくて……」
困らせてごめんなさい、と付け足す。
一緒に過ごしていくうちに俺達の距離も少しずつ近くなっていたのかな。
こんなにまっすぐで透明な気持ちになったのはいつぶりだろう。
「……少し考えてもいい?」
俺が出した答えは保留。
今はまだ星那のことが好き。でも、もしかしたら他の人に目を向けられるときがくるかもしれない。
「はい、待っていますから」
今の俺に必要なことは誰かの優しい心に触れることだったのかもしれない。
この選択が彼女を傷つけてしまうこと。それくらい俺だってわかっていた。
それでもこのときは、誰かに縋らないと前を向けなかった。