桜色の涙
星那に聞かれていた。そのことがわかるとなんだか少し後ろめたい気持ちになる。
それと同時に、妬いてくれたかなと淡い期待を抱いてしまう。
星那にとって俺はどうでもいい存在なのに。気にしてくれるわけがないのにどこまでも信じてしまう俺は、本当にバカなんだ。
「迷っているんだよね?……本当は気になっているんでしょ?」
その言葉に言い返すことができなかった。
小谷さんのことが気になっているか。そう聞かれたら俺はきっと「NO」と答えるだろう。
それに、好きな人にそんな勘違いをされて傷つかない人なんていないよ。
だって俺は星那のことが好きなのに、いつの間にか小谷さんのことが気になっていると思われているなんて。
「私じゃなくて、あの子にしなよ」
────そう言われた途端、目の前が真っ暗になったような気がした。