桜色の涙


「お邪魔しましたー」


もうすぐ日が暮れる頃、俺達は矢代さんの家を出た。


小谷さんの家はここから近いから俺が送っていくことにした。


渚の家とは反対方向だから渚とはここで分かれることになる。



「……じゃあな」


心なしか心配そうな渚の顔。もしかして、まだ俺が無理していると思っているのかな?


「大丈夫だから。また明日ね」


それだけ言って俺は歩きだす。小谷さんは小さく手を振って俺の隣についた。



その表情は嬉しそうで、好かれるってこういうことなんだ、と俺まで嬉しくなった。


彼女と一緒にいる時間は幸せな気持ちに浸れる。


星那と付き合っていたときは知らなかった相手に想われる嬉しさ。それは彼女に教えてもらった気持ちなんだ。
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