桜色の涙

「やっと見つけた。広瀬」


ふと後ろから声が聞こえた。よく知っている声。でも、聞き慣れたくはない声。


「江崎くん……」


正直に言うと会いたくはなかった。しかも、隣に小谷さんがいるときには絶対に会いたくなかった。



「隣にいる奴が新しい彼女?」


彼はいつでも変わらない。いつだって余裕そうで不敵な笑みを浮かべている。


そしてそのまま小谷さんに近寄る。



「あれからどうだった?悲しかった?」


きっと宿泊学習の夜のことを言っているんだろう。


『あれからどう?』だなんて、わかりきったことを言わないでよ。全部わかっているはずなのに。



「江崎くんには関係ないよ」


あの日、彼は星那とキスしていた。きっとふたりがいたのには理由があったはず。


しかも、わざと俺に見せるようにしていたってことは、やっぱり付き合っているのかな……。
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