桜色の涙

『星那、欲しい物ある?』


そっけなく、でも探るように尋ねると。


『私、かき氷が食べたいな』


笑顔で返ってきたその答えになんだか安心した。


かき氷の屋台にはたくさんの人が並んでいて、俺達はその列に並ぶことにした。




そして、ちょうどかき氷が手に入った頃。夜空には大きな花火が打ち上がり、星那の顔が間近にハッキリと見えた。


あぁ、やっぱり綺麗だ。


この手を伸ばせば今にも届きそうなのに俺にはそんな勇気なんてなくて、曖昧なままこの気持ちはぶら下がっている。



『悠大くんっ!』


後ろから、どこかで聞いたことのあるようなうるさい声が聞こえた。


毎日俺のところに来るから嫌でも覚えてしまったこの声は……矢代だ。


名前を覚えるのが苦手な俺でも覚えてしまうほど矢代はいつも自己紹介をする。
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