桜色の涙

でも、振り返った俺と星那の目に映ったのは。


『……は?広瀬?』


『じ、ん……?』


ふたりの女子に囲まれた広瀬だった。



状況はよくわからない。でも、俺にとって好都合だということだけはわかった。


きっと広瀬は誤解しているはずだ。星那も嫌な方向へ考えを巡らせているだろう。



『星那、行くぞ』


『え?で、でもっ』


これ以上見ていられなかった。星那と広瀬が一緒にいるところなんて見たくなかった。


広瀬の前ではあんなに切なそうな顔をするのか?


俺には見せてくれなかったのに。広瀬よりもずっと前から一緒にいるのに。


どうして俺の知らない星那の表情を広瀬は知っているんだよ。


どうしてだよ。いつから星那の1番は俺じゃなくなったんだよ……。
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