桜色の涙

「こっちだよ」


目の前の曲がり角から登場したのは、なんと江崎くん。


小谷さんと別れた日以来話していなかったから、会うのは久しぶりのように感じる。



「今日、告白するんだろ」


「うん」


ずっと彼のことが苦手だった。


俺の恋敵で一生敵わない相手。星那のことを傷つけた許したくない人。そんな位置づけだった。


いつも全て知っているかのような余裕な顔で話すし、遊んでいるように不敵に笑って何事も完璧にこなしてしまう。


かっこいいし運動だってできるしモテるし、俺が勝てることないと思っていた。



それでもひとつだけ俺が勝てることは。


「江崎くんよりも俺は星那のことが好きだよ」


好きでいる時間は彼の方が長いだろうし、星那との距離が近いのも彼かもしれない。


それでも俺は星那だけを見てきた。



「俺は……諦めた人間だ」


あ、まただ。彼の悲しげな表情の裏には何が隠れているんだろう。


ずっと前から、笑っているのに心が泣いている気がしてならなかった。


俺の勘違いだと思い込ませて安心しようと思っていたけど、これはやっぱり……。
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