桜色の涙

「星那のことが好きだった。誰よりも近くにいた」


苦しそうな表情で語られていくのは彼の過去の一部分。


俺が知ろうとしなかった星那と彼の過去。



「怖かったんだよ……。変わっていく環境も、近づけば近づくほど触れられない距離も」


────限界だったんだ。


そうこぼした彼はきっと、ひとりでは抱えきれないほどの後悔を背負い込んでいるんだろう。



「ずっと広瀬が羨ましかった。俺が忘れていた素直な気持ちを伝えられる広瀬が……」


彼はひとりになる道を自分から選んだわけじゃなかった。 ただ頼り方を知らなかっただけなんだ。


「心から嫌いで羨ましかった……っ」


なんだか不思議だよ。嫌いって言われているのに心があたたかくなるんだ。


本音が聞けた気がして。少し近づけた気がして嬉しいんだ。
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