・喫茶店『こもれび』
「なんか苛立ってる? 早いけど、休憩してきてもいいよ」
「行きません! 休憩したければ、三好さんがしてきていいですよ。お客様も、あの女性一人だし」
我ながら、可愛くない。
そう思っているくせに、素直じゃない。
いつもの私じゃない。
ツンケンしている私、可愛くない。
「そう? じゃあ、少し彩夏ちゃんに任せていいかな」
「え?」
本当に休憩に入っちゃうつもりなの?
嘘でしょ?
三好さんはカウンター内から出てくると、その足で思わぬ場所へ向かった。
完全に、予想外。
想定外だった。
三好さんが私に背中を向け、真っすぐに向かったのは、あろうことか二人きりにさせたくないと思っていた、あの女性の座っている客席だったのだ。
「……いいの?」なんて、所々聞こえてくる女性の声が気になるのは、当然のことであり。
二人の話を聞きたくないと思う反面、聞き耳を立てている自分がいた。
私より少し背の高い観葉植物に身を隠し、出来るだけ二人の傍まで近づいてみる。
二人は話に夢中なのか、明らかに不審者である私に気付きもしない。
見つかって怒られることも怖いけれど、存在を忘れる程に二人の世界に入り込まれていることも。
それはそれで、また腹が立った。