副社長のイジワルな溺愛

 経理室に戻ると、すかさず室長に呼ばれてデスクに向かう。


「お疲れさま。例の件、どうだった?」
「問題なく済ませました」
「そう、助かりました。ありがとう。メールを送っておきましたので確認してください」
「かしこまりました」

 また副社長が何か室長に無理を言ったりしているのだろうか。
 これ以上接点を持つようになるなら、さすがに断らなくちゃいけないだろうな。


【お疲れさまです。深里さんが副社長室に出入りしているのは、周りに伏せるようにと副社長から指示がありましたので、資料室か他部署に行っていることになっています。それとなく戻って来てくれたら大丈夫だと思いますので、心置きなく業務に取り組んでください】

 自席でメールを確認すると、確かに室長から送られていた。
 心置きなくって……。できればこの作業から外してほしいくらいなんですけど。

 室長に文句を言っても仕方ないか。一日も早く後任の副社長秘書が仕事を覚えてくれたらいいだけだもの。


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