副社長のイジワルな溺愛
PC画面の右下に新着メールの通知が出て、数秒で消えたのを視界の端で捉えたけど、後で確認しようとそのままに、データ入力と確認資料との照合を続ける。
小規模な見積と発注請書の確認も私の仕事。同じような業務の仲間も数人いるから、毎日私がやるわけではないけど、担当している部署から上がってくれば対応しなくてはいけない。
倉沢さんとやりとりするようになったのも、構造設計グループの担当に私が含まれているからだ。
作業の手を休めながら炭酸水を飲み、メール受信画面に切り替える。
【お疲れさま。明日、終業後に副社長室に来れるか?】
誰にも見られてはいけない副社長からの連絡に、ウィンドウを小さくして返信を打つ。
【お疲れさまです。金曜は予定通り就業時間の間に伺います。経理データが多いのでしょうか?】
作業量が多いから、他の業務との兼ね合いを考えてくれたのかな。
でも、カードキーだって預かったままだから、終業時間中に行って返したい。毎回秘書の目をかいくぐる必要があるけど。