副社長のイジワルな溺愛

 翌朝、目覚めからいつもと違う。
 アラームが鳴る十分前に目が覚めたし、前日も早く寝たからか気にしていた顎の小さな肌荒れも治っていた。


 メイクもヘアスタイリングも念入りに。
 バッグはリュックサック厳禁、ひと目ぼれして買ったけど出番がなかった、人気カジュアルブランドのバッグを腕にかけて家を出た。

 明け方降った雨のせいで、幾分か肌寒い朝の風に紺色のスカートの裾が翻る。アイスグレーのノースリーブの上に羽織ったストールに、竦めた肩を埋める。
 日々研究した流行りのおしゃれも、センスがいいかわからないけど好きな服を着ているだけで気分が上がっていくから不思議だ。

 会社の最寄駅に着くなり、噂を知る女子社員の視線を浴びた。
 エレベーターを待っている間も、四方八方でひそひそと話題にされているのが聞こえてきた。


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