副社長のイジワルな溺愛
「誰から誘われた?」
「……倉沢さんです」
「倉沢? 構造設計グループのか?」
頷くと、副社長は驚いた表情を見せた。初めて見るその顔に、私も思わず固唾を呑む。
「確認させてもらうが、君は誰のために魅力を磨きたいと言っていたんだ?」
「自分のためです。それから……倉沢さんのことが好きなので」
何を今さら聞いてくるのかと思いつつ、二度目の告白は意外とスムーズなものだと思った。
あの時は事実を伝えるのに変な汗をかいてしまったけど、副社長が優しかったから話しやすかった記憶がある。
――でも。
「倉沢のことが好きなのか? 君は」
「はい」
再確認されて返事をした直後、すぐに副社長は左手で額を支え、デスクに肘をついて項垂れた。
「もう行っていい。午後にでも好きなタイミングで例の作業はして構わないから。その時間、俺は外出しているから施錠だけは忘れないように」
「かしこまりました」
いつもと違う彼の様子や、今さら倉沢さんへの片想いを確かめられて疑問を感じる。
だけど、俯いている副社長の表情は見えなくて、私は一礼してからこっそり副社長を出て自席に戻った。