副社長のイジワルな溺愛

 倉沢さんに会いたい。

 倉沢さんと話したい。


 なんでもいい、仕事のことでもいい。
 期限ギリギリの経理書類でもいい。

 今までと同じ出来事をただ繰り返すだけでもいいから……。



「倉沢は、年明けにはマレーシアだからなぁ。寂しいだろう、君は」
「っ……はい」
「正直だな」
「すみません」

 せっかく労ってくれているのに、また私情を挟むなんて失礼だと分かっていても、忘れられない思い出が涙になってこみ上げてくる。



「告白はできたのか?」
「…………」

 頷くと、大粒の涙が落ちた。
 あんなに泣いたのに、まだ涙があったんだなぁ。
 早く思い出にしたいのに、過去になるのが悲しいなんて。


< 192 / 386 >

この作品をシェア

pagetop