副社長のイジワルな溺愛
「倉沢さんも好きな人への想いを断って、マレーシアに行くそうです。だから、私を連れて行くなんてことは考えられないし、帰国する五年後まで好きでいてほしいとも言えないって言われました」
「……そうか」
シャンパンを飲み干した副社長は、フォアグラを上品に食べている。
「すみません、暗くしてしまって」
「構わない。泣きたければ思う存分泣きなさい」
言葉は突き放すようだけど、その声色はとても優しくて温もりがある。
泣いている私を見ても、メイクが崩れているとは言わずに微笑んでいてくれるだけだ。
「冷たいようだけど、君の恋が終わったことしか俺には分からない。君の心がどれほど傷ついてしまっているのかを推し量ることはできても、完全に分かってあげられることはきっと無理だろう」
「…………」
冷静に話し出した副社長は、魅惑的な瞳でまっすぐに私を見つめていて。
「でも、そういう時は少しくらい寄りかかってもいい。君は一人で抱え込んで、一人で頑張ろうとするから躓くんだ」
「はい……」