副社長のイジワルな溺愛

「俺をからかうのはやめろ」
「からかってなんかないです! だって、副社長にキスをされる日が来るなんて思いもしなかったから……」

 水を飲んで呼吸を整えた彼は、大きく息をついて店内に視線を彷徨わせているけど、私は大まじめだ。


「秘書のサポートをお願いして、君が副社長室に来るようになった時から、俺はいつ奪ってやろうかと思っていたけどな」
「副社長こそ、からかうのはやめてください」
「俺は本気だよ。君の好きな人が誰なのかと聞いたのは、俺を好いてると思ってたから、自信満々で言い当てたつもりだったんだからね」


 イニシャルはK。
 私はてっきり倉沢さんのことを言われたんだと思っていたのに……。

 ――御門慧。
 副社長の名前をすっかり忘れていた私は、今さら気づかされた。


「倉沢に片想いしていたとは、さすがに思ってなかったからな」

 私が倉沢さんの名前を答えたあの時、彼が俯いて表情を見せなかったのは、そういうことだったのかと知った。


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