副社長のイジワルな溺愛
「……よかったね。香川さん、ずっと倉沢さんのことが好きだったもんね」
「うん! 本当に嬉しくて嬉しくて、背中を押してくれた深里さんに大感謝!」
「私は何もしてないよ」
そんなことないと言って、満面の笑みを浮かべる彼女に表情の温度を合わせるものの、心の中はどうにも複雑で、本当に喜んでいるわけではない。
私も、入社してからずっとずっと……倉沢さんに恋をしていたから。
経理室に来てくれたり、試験勉強を手伝ってくれたり、いつも飲んでる炭酸水を知っていて差し入れてくれたり……。
飲みに誘ってくれた日、心無い言葉で逃げ出した私を追いかけてきてくれたのも。
――期待しちゃったじゃないですか、倉沢さん。
もっと思い切り振ってくれた方がよかったのに。
半端な優しさで、傷つけられたような気分のまま、あなたを諦めるのがどんなにつらいかわかりますか?
「それでね、彼がマレーシアについてきてほしいって言ってくれて。だから、来期までに会社を辞めるって決めました」
「そっか。おめでとう。でも、寂しくなるね」