副社長のイジワルな溺愛

「今日は元気がないな」
「そんなことないですよ」
「強がることはないだろう? 何があった?」

 ハンドルを握って、前を見ている彼が私を一瞥して問う。

 副社長に話して、何か変わるだろうか。
 片想いも失恋も知っている彼だからこそ、伝えやすいけれど……。彼の想いを知りながら答えを待たせているのに、また甘えてしまうのは悪い気がして咎める。



「俺のことは気にするな。君の笑顔が見れないのが気がかりなだけだ。言いたくなければ言わなくてもいい」
「……ありがとうございます」

 さすがに香川さんから報告を受けた当日じゃ、心の整理がつかない。
 ただの失恋だと思っていたけれど、彼女は倉沢さんと未来を共にするのだから、切なさが蒸し返されたようで……やっぱり痛くて苦しい。


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