副社長のイジワルな溺愛
五十五階にある彼の自宅は、何度来ても広すぎる。
四人家族で暮らしても余らせてしまいそうなのに、彼は本当に一人で住んでいるのだろうか。
「副社長は、彼女いないんですか?」
「君は本当に面白いね。彼女がいても君を連れ込むような男だと、俺を判断しているのか?」
「あっ、そういうことではなくて……このお部屋がとっても広いので、つい」
彼はコートとスーツジャケットを脱いでネクタイを解き、ダイニングの椅子に掛けた。
副社長のベスト姿を見ると、胸の奥が騒ぐ。背中の艶を撫でたいと思うほど。
「掃除が行き届かないから、家政婦を雇ってお願いしてるけど、他に出入りしているのは君だけだ」
「そう……ですか」
「なんだ? この答えじゃ不満か?」
スラックスのポケットに片手を入れ、私の元へやってきた彼を見上げた。
夜空が広がっているような彼の瞳は、とても優しい眼差しで私を映す。
彼の言葉に偽りはないと思うのに、まだ彼の想いを受け入れるのは違うと思って……。