副社長のイジワルな溺愛

 ソファと並んでいる黒いガラスのテーブルに、白い紙切れが置かれているのに気付いた。

 荷物をダイニングチェアに置いてから、冷蔵庫に入れてあるオレンジジュースをグラスに注いでソファへ。




 生まれて初めて手にしたその紙に、小さく手が震えてしまう。


「これって……」

 信じられない想いでふと視線を流すと、馬蹄の形が彫られた透明のペーパーウェイトの下に、彼の文字が残されたメモを見つけた。



【茉夏のタイミングで、いつか家族になれたら】


 彼の署名と捺印が済まされた婚姻届を眺める視界が、涙で自然と滲む。
 濡らしてはいけないと、そっと元の場所に戻してから、嬉し涙を指先で拭った。


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