副社長のイジワルな溺愛

「もう戻らなきゃ」
「まだ大丈夫」
「でもっ」

 せっかく癒されていたのに、突然時間を気にしはじめたから引き止める。


「あと五回だけ」
「……っ」
「今は俺のキスに集中しなさい」

 声になる前に吐息と化した彼女の小さな喘ぎを、やんわりと唇で塞いだ。


 社内では聞くことのない、キスの音。
 わざとそれを鳴らすために彼女の唇を吸って解放し、自ずとできた隙間から舌を入れた。


 付き合ってから幾度となく交わしてきたのに、未だに茉夏は慣れていないようでぎこちない。


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