副社長のイジワルな溺愛

「あ、そういえば、幸田(こうだ)さんっていう方にお食事にお誘いいただいたんですけど」
「……幸田? 海外施工の? アイツと茉夏が話すなんてことあるのか」
「経理室のフロアにいらした時、出会い頭にぶつかりそうになって、そこからです」

 まさか、幸田が茉夏に近づくとは思わなかったな。

 
「それで?」
「返事をする前に、慧さんに言った方がいいと思って」

 幸田は俺と同期入社の優秀な社員だ。
 海外でずっと勤務してきて、今年からやっと国内の事業にも携わることになった。もし、今年度も海外に滞在するとなっていたら、倉沢と一緒にマレーシアにいたはず。


「茉夏は行きたいのか?」
「はい」
「どうして?」
「……せっかくお誘いいただいたし、最近やっと経理室以外の方とも話せるようになってきたので」

 中には本当に彼女と友好的な気持ちで接している社員もいるだろうけど、そうじゃない者もいる。
 俺の彼女だって知って、近づく人間が出てくることは分かっていた。


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