副社長のイジワルな溺愛

 偶然隣り合った見知らぬ二人の会話が羨ましい。
 浴衣姿をべた褒めされて嬉しそうにしている彼女は、幸せそうにしていて……。

 慧さんは、どう思ってるんだろう。
 そういえば、家で村上さんに着付けてもらってからというもの、彼は私の浴衣姿に何も言ってくれない。
 私も特別何も言えていないけど……あまりにも素敵で、照れてしまうんだ。


「かき氷、食べる?」

 問いかけに答えると、右側に軒を連ねている屋台が途切れたところに、風情のある和菓子屋さんが見える。
 ふと視点を上げた先には、老舗の和菓子店で有名な【たち花】の看板があった。


「ここの抹茶かき氷は絶品なんだよ。食べたことある?」
「ないです! あまり和菓子を買う機会もないので……」
「そうか。でも、たまにはいいものだと思うよ。たち花の菓子を出しておけば間違いないって言われているくらいだからね。覚えておきなさい」
「はい」

 人混みを外れて、店の軒に入る。
 引き戸をゆっくり開けると、作務衣を着た女性に迎えられた。


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