副社長のイジワルな溺愛

「足、痛めてない?」
「大丈夫です。鼻緒の当たりがやわらかいので、歩いてて楽です」
「そうか」

 この浴衣セットも下駄も、山吹色の布が半分貼られたかご巾着も。
 絶対に高価なものなんだろうな……。私が持っているものとは仕立てが違うし、何より着ていて心地いい。


 最後の方は食べられなくて彼に渡したかき氷が空になって、足元のビニールに容器を片付ける。
 ふと視線を感じて顔を上げると、慧さんはほんの少しだけ私と目を合わせてから、打ち上げ前の空に浮かぶ弓張り月に瞳を移してしまった。


 ――やっぱり、似合ってないのかな。
 せっかく買ってきたのに、私なんかが着こなせるようなものではなかったのかもしれない。
 村上さんが一生懸命かわいく着付けてくれたけど、着る人間が魅力不足じゃダメだよね。


「慧さん、なにか言いたいことがあるんですよね?」

 似合ってないなら、そのまま伝えてほしい。
 “やっぱりお前には、まだ早かったな”って笑ってくれたら、仕方ないけど納得せざるを得ないだろうし……。


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