副社長のイジワルな溺愛
「……いや、何でもない。花火始まる頃だな」
明らかに何かを隠している彼にムッとしつつ、言わずにいてくれるのも彼の優しさかもしれないと思える。
でも、何でも話すと約束しているのにと、胸中では不満が残った。
打ち上げの始まりを告げる場内アナウンスが流れてから数秒後。
ひゅーっとひと筋を描くような音の後、一斉に開いた花が咲き誇る。
赤や金、白銀や青、緑。
彩り豊かな菊花火が、藍色の空を飾っては尾を引いて散り、また打ちあがった。
「きれー……」
意識せずとも声になる。
好きな人と見上げる花火が、こんなにも綺麗で感動的だなんて知らなかった。
「そうだなぁ。花火をこんなにちゃんと見たのは、何年ぶりだろうなぁ」
「ずっと来てなかったんですか?」
「仕事と重なってたからね。茉夏は?」
「私は……好きな人と来たのは初めてです」
「そうか」
見上げたまま話していると、また彼の視線を横顔に感じて視線を流す。