副社長のイジワルな溺愛

「茉夏の浴衣姿、最高にかわいいよ。綺麗すぎて、ずっと言えなかった」

 思いもよらない言葉を告げられて驚喜した私の瞳は、熱っぽい透明で視界が満たされていく。
 溜めきれないほどの涙が睫毛から落ちて頬を伝うと、今度は彼の方がびっくりしてしまったようだ。


「なんで泣くかな」
「だってっ……かわいいとか綺麗とか、言ってもらえると思わなかったから」
「お前が予想以上に色気振りまいてるせいで、ここまで来る間どれだけ俺が……」

 そう言うと彼は慌てて口を閉ざし、信玄袋から出したハンカチを差し出してくれた。


「慧さん、何でも言う約束です」
「…………」

 彼は観念した様子で深く息を吸い、次々打ちあがる赤牡丹を一度見てから、私に向き直った。


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