副社長のイジワルな溺愛
「会場に着いてここまで歩いてくる間、通り過ぎる男が全員って言ってもいいほど茉夏に見惚れて、鼻の下伸ばした顔ばかり見てきたんだよ。たち花のかき氷は好きだけど、店に入ったのは一瞬でも視線を遮りたかったから」
「……わ、私だって」
いつでも冷静で落ち着いた声色に、彼の嫉妬が色づいているようで嬉しくなったら、私も言いたかったことを口にしたくなる。
「慧さんの浴衣姿が素敵すぎるから……ずっと見惚れちゃって」
「それは知ってた」
「えっ!?」
驚いている私の腰にそっと手を回し、もう一方で缶ビールを傾けた彼は、しだれ柳の幻想的な尾を瞳に映す。
「知ってたんですか?」
「まぁ、あれだけ凝視されればな」
「慧さんだって、周りの女の人に騒がれてて、私すっごく妬いちゃって……」
勢い余って言わないでおこうと思っていたことまで言ってしまった。
「へぇ。妬いてくれてたの?」
「……ちょっとだけだもん」
「はいはい」
余裕たっぷりの笑みを見せられ、私ばかりが頬を赤く染める羽目になったけど、悔しさと嬉しさが混じるくすぐったい気持ちは忘れたくないと、彩色千輪菊の花火と共に記憶に焼きつけた。