副社長のイジワルな溺愛
証憑となる領収書が貼り付けられた提出用紙を一枚ずつめくって確認していく。
部署ごとにまとめて渡されていたから、構造設計グループの終わりがやってきて、集中が少し途切れてしまった。
飲みかけの炭酸水を飲み、経理室内に目を配る。
室長は面倒な案件を依頼されているのか、どこかの部署と難しい顔をして話している。お局の先輩は、新入社員の男の子に懇切丁寧に業務を教えてあげているようだ。
続きの束に取りかかろうと、デスク左に置いておいた書類を目の前に引き寄せる。
次は役職者の束で、一枚一枚の桁が大きなものがあるはず。確認者が別の人間であることもチェックして不正がないように気を配らなくては。
――これ、微妙だなぁ。
割印の陰影が薄くて、はっきり読み取れないものが出てきた。
問題なしと判断されたから、経理室内でもデータを通されたのかもしれないけど、念のため再押印してもらったほうがいいのかな……。
申請者を確認して、手が止まってしまう。
副社長の領収書を扱うのは、これで二度目だ。そして、このデータをチェックした同僚は今日に限って有給を取っている。