副社長のイジワルな溺愛
本当を言うと、経験は皆無に近い。高校生の時に付き合った元彼がいるだけ。キスくらいはしたことがあるけど、“大人の関係”はまだ知らない。
それからはずっと恋人はいなくて……今は就職して以来、倉沢さんの虜。
「噂になって、困ってるくせに。慣れてるなら気にしないでいられると思うけどな」
その話題に触れられると思っていなかったから、驚いて目を丸くしてしまった。
「副社長は噂になってご迷惑ではないのですか?」
「いちいち気にしていられるか、そんなもん。噂なら今までもあったし、放っておけば消える」
「同感です」
大きく頷いて答えると、副社長は私を見つめたまま無言になった。
「で、誰のために着飾ってるんだ?」
「誰って……自分のためです」
このまま地味系でいたんじゃ、一生彼氏なんてできなさそうだし。お局の先輩みたいに“経理のおばちゃん”なんて裏で呼ばれたくない。
それに、倉沢さんともし付き合えたらいいなぁって思うから。