副社長のイジワルな溺愛

「何か不都合でも?」
「宛名が間違っているようでして」
「いつの領収書だ?」

 手招きされて副社長が座る大きなデスクの前に立ち、原本を差し出した。


「本当だ。ミサトになってるな。全く、適当に書かれたか……」
「社内でミサトは私しかおりませんので、この金額を私が請求していることになってしまうのですが」

 領収書の額は約百万。金額の大小にかかわらず、誤りのある申請は通すわけにはいかない。


「そうか、今日が締日だったな」
「はい」

 さすが副社長。社内のあらゆるスケジュールを把握しているようで、カレンダーに目を向けて再確認している。


「悪いけど、君が行ってきてくれないか? 御門の遣いで来たと言えば通じるはずだ」
「私がですか?」
「仕方ないだろう? 私はこれから取引先を訪問する予定が入っているし、夜は会食がある。秘書に預けてもいいが、身重で近々産休に入るんだよ」

 事情を聞いたら、断るわけにもいかなかった。


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