副社長のイジワルな溺愛

「あぁ、そうだ。それからもう一つ。産休中の秘書の代わりに後任が入ってくれているが、まだ不慣れでね。経理関係は君に任せてもいいだろうか」
「経理室長にお話されていらっしゃいますか?」
「いや、まだだ。先に君の答えを聞いておこうと思ってね」

 噂を気にしても仕方ないって分かっていても、いつ消えてくれるともわからないのに、ずっと居心地の悪い時間を過ごすのは耐えられなさそうだ。


「経理室長を通していただけると助かります」
「君は本当に真面目だな。……わかった。私の方から話しておく」

 ドアの前で一礼して副社長室を後にした。


 副社長が、倉沢さんへの想いを成就させるために協力してくれるなんて意外だった。
 周りは彼の整った外見や優秀な仕事ぶり、感情を見せない冷たそうな一面ばかりを見ているようだけど、この数日接してみて分かったことがある。

 本当は優しい人なんじゃないかな……って。
 仕事とは関係のない私の恋のためにアドバイスまでするなんて、彼の言動を聞いたら驚く人ばかりだろう。


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