副社長のイジワルな溺愛
「副社長は外出先から戻られるところだったんですか?」
「今日の仕事は終わり。たまには早めに切り上げてゆったり過ごそうと思っていたところだ」
「……私がいたら、お邪魔ではないでしょうか」
「別に、構わない」
初めて乗る高級車にどうも馴染めない。
疎い私でも分かるハンドルのエンブレムに緊張して、副社長に何か言い返す言葉も飲み込んでしまった。
「何か用があったか?」
「ありません」
「そうか。じゃあ、少し付き合ってもらう」
駅前を離れて大通りを走り抜けていく間、会話が思いつかなくて黙り込んだ。
副社長も特別口を開く様子はなさそうだし、何度接しても緊張してしまうのは、私だけなんだろうな。
十五分ほどすると、街並みは次第に閑静な住宅街に変わって、車が減速したのちに停まった。
「降りて待ってて」
綺麗に舗装された街路に降り立つと、副社長の車は間近にあった坂を下っていった。