副社長のイジワルな溺愛
「君、ちょっと待って」
エレベーターの到着を待ちながらぼんやりしていたら、副社長が部屋から出てきて私に声をかけた。
何か失礼なことをしたかな。部屋のドアを壊すつもりはなかったし、初対面で緊張していたから上手く話せなかったけど……。
「私の名刺を持っていきなさい。何かあれば連絡してくれて構わない」
社のロゴマークが入った、誰もが持っている名刺。違いは上質な紙が使われているくらいだ。
でも、副社長の肩書と名前が載っているだけで特別輝いて見えた。
自席に戻り、領収書に記載されている電話番号に連絡を入れる。
【club 藍花】という店名からして、明らかに夜のお店だろう。
時刻は午後三時過ぎ。呼出音が鳴り続け、応答したと思ったら開店は二十時とアナウンスが流れた。